GUIDE BOOK No.02
ケガ・痛み
シンスプリント
内側脛骨ストレス症候群(MTSS)
走ると、すねの内側が痛む。練習量を増やすと繰り返す。
「使いすぎ」だけで終わらせず、骨への負荷と身体の使い方から考えます。
WHAT YOU WILL LEARN
この記事で分かること
✓ シンスプリントの代表的な症状と痛む場所
✓ ランナーに起こりやすい負荷と身体側の要因
✓ 最新研究から見たリスク因子と対処方法
✓ 脛骨疲労骨折など、似た症状との違い
✓ RunTreeで確認することとランニング復帰の流れ
WHERE DOES IT HURT?
痛みが出やすい場所
すねの内側、中央から下側へ
代表的には、脛骨の内側後方に沿って、ある程度広い範囲に痛みや圧痛が出ます。 診断上は、触ったときの痛みが5cm以上の範囲に広がることが一つの目安とされています。
※一点に強い痛みが集中する場合や、歩行時にも痛む場合は疲労骨折なども考慮します。
COMMON SYMPTOMS
このような症状はありませんか?
シンスプリントでは、運動中や運動後にすねの内側が痛みます。 初期には動き始めだけでも、負荷が続くと練習後や日常生活でも気になる場合があります。
✓ 走ると、すねの内側が痛む
✓ 練習後にすねがジンジンする、重だるい
✓ 脛骨の内側を押すと広い範囲に痛みがある
✓ 走行距離やスピード練習を増やしてから痛みが出た
✓ 休むと軽くなるが、走り始めると繰り返す
WHY IT HAPPENS
なぜシンスプリントが起こるのか
多くの場合、原因は一つではありません。 骨に加わる繰り返しの負荷と、その負荷を受け止める身体の許容量とのバランスが崩れたときに起こりやすくなります。
走行距離・強度の急な増加
部活動の開始、ブランク後の再開、坂道やスピード練習の追加など、短期間の負荷変化がきっかけになります。
足部の荷重とアーチの変化
足部のアーチ変化が大きい、荷重が内側へ偏るなどの特徴は、発症リスクとの関連が報告されています。
足関節・股関節の可動性
足首や股関節の動きには個人差があり、他の要因と組み合わさって下腿への負担へ影響することがあります。
片脚支持と接地動作
接地時の身体のブレ、足部の動き、接地時間などが、すねへの繰り返し負荷へ関係する場合があります。
過去のシンスプリント
過去にシンスプリントを経験した人は、再発リスクが高いことが複数の研究で示されています。
回復不足・路面・シューズ
硬い路面、シューズ変更、睡眠不足、連日の高負荷などが重なり、骨の回復が追いつかなくなる場合があります。
RUNTREE POINT
「筋肉が硬い」だけでは説明できない
シンスプリントは、下腿の筋肉だけでなく、脛骨へ繰り返し加わるストレスを含む障害です。 RunTreeでは、痛む場所への施術だけで終わらせず、 練習負荷、足部、股関節、接地、回復状況まで確認します。
RESEARCH & EVIDENCE
最新研究から分かっていること
シンスプリントの研究では、発症リスクに関する知見は蓄積していますが、 治療法については質の高い研究がまだ十分ではありません。 そのため、負荷調整と段階的な運動療法を基本に、個別評価を組み合わせます。
発症リスクは、一つの身体特徴だけでは決まらない
身体活動者を対象としたレビューでは、女性、体重・BMI、 ナビキュラードロップ、股関節外旋可動域、過去のシンスプリントなど、 複数の要因との関連が報告されました。 ただし、個々の関連は中等度以下で、単独の特徴から発症を予測することはできません。
RUNNER'S TAKEAWAY
「扁平足だから」「股関節が硬いから」と一つに決めつけず、 練習量と複数の身体要因を合わせて考える必要があります。
足部の圧力分布とランニング動作が発症に関係する可能性
ランナーを前向きに追跡した研究では、後にMTSSを発症した群で、 足底圧分布やランニング中の下肢運動に違いがみられました。 ただし、筋力や可動域を含め、すべての項目で明確な差があったわけではありません。
RUNNER'S TAKEAWAY
静止した足の形だけでなく、実際に走ったときの荷重移動や動作を確認することが重要です。
ランニングフォーム修正の効果は、現在も検証中
MTSSに対してランニング再教育を標準的ケアへ追加する試験が進められています。 フォーム修正は臨床で広く用いられていますが、 現時点では「必ず有効」と断定できる十分な結果はまだありません。
RUNNER'S TAKEAWAY
フォーム変更は全員へ同じ形を押しつけるのではなく、 痛みと負荷を減らせる場合に、段階的に試すべき方法です。
特定の治療法を強く支持する根拠は、まだ限定的
MTSSの治療研究をまとめたレビューでは、対象となった試験の多くでバイアスリスクが高く、 装具、物理療法、各種治療のどれか一つを強く推奨できる十分な根拠はありませんでした。
RUNNER'S TAKEAWAY
特殊な機器や一つの施術へ依存せず、 負荷調整と身体機能の改善を土台にすることが現実的です。
研究結果を読むときの注意点
シンスプリントは、脛骨のストレス障害という連続体の中で考えられることがあります。 研究で関連が報告された特徴が、そのまま全員の原因になるわけではありません。 RunTreeでは、実際の症状、練習量、身体機能、回復状況を合わせて判断します。
RED FLAGS
似た症状を起こす別の疾患
すねの痛みが、すべてシンスプリントとは限りません。 痛みの範囲、日常生活での症状、しびれや張りの有無を確認します。
脛骨疲労骨折
狭い一点に強い圧痛があり、歩行や日常動作でも痛む場合は骨ストレス障害を疑います。
慢性労作性コンパートメント症候群
運動中に下腿が強く張り、しびれや筋力低下を伴い、休むと比較的速く軽くなることがあります。
後脛骨筋腱障害
痛みが内くるぶし周辺から足部内側へ続き、片脚のかかと上げで痛む場合に確認します。
神経・血管由来の下腿痛
しびれ、冷感、足の色の変化、筋力低下などがある場合は神経や血流の問題も考慮します。
医療機関への相談を優先したい目安:
一点に強い圧痛がある、歩くだけでも痛い、安静時痛や夜間痛がある、
腫れが強い、しびれ・筋力低下を伴う、症状が急速に悪化している場合。
RUNTREE ASSESSMENT
RunTreeで確認すること
すねの内側だけを触って終わらせず、どの負荷が脛骨へ集中しているのかを整理します。
痛みの範囲と練習履歴
圧痛の範囲、発症時期、距離・強度・坂道・路面・シューズの変化を確認します。
足関節の可動性
足首が無理なく動き、接地から前方移動へつながっているかを確認します。
足部の荷重とアーチ変化
静止時の形だけでなく、荷重時に足部がどのように変化するかを見ます。
片脚支持と股関節
片脚立位やスクワットで、体幹・骨盤・股関節・膝・足部の連動を確認します。
下腿の筋力と負荷耐性
ふくらはぎ、足趾、足部周囲筋が、現在の走行負荷を受け止められるかを確認します。
ランニングフォーム
接地位置、接地時間、身体のブレ、足部の動きなどを確認します。
CLINICAL PERSPECTIVE
RunTree 森長の臨床視点
シンスプリントは、痛みの場所と練習の増え方を最初に確認します。
シンスプリントの方には、部活動の開始、合宿、スピード練習、坂道、 月間走行距離の増加など、症状が出る前に明確な負荷変化があることが少なくありません。 まず「どの練習から痛くなったか」を整理することが重要です。
RunTreeでは、痛む場所の範囲を確認し、疲労骨折の可能性を見逃さないようにした上で、 足部、足首、股関節、接地動作を評価します。 休んで痛みを下げるだけでなく、骨と下肢が負荷へ適応できるよう、 段階的に走る量を戻すことを大切にしています。
RunTree院長 森長孝太
RETURN TO RUNNING
改善からランニング復帰まで
痛みが軽くなった直後に元の距離へ戻すのではなく、 日常生活と翌朝の反応を確認しながら、骨へ加える負荷を少しずつ増やします。
痛みを増やす負荷を減らす
距離、速度、坂道、連続走を調整し、歩行など日常動作で症状が悪化しない状態を目指します。
下肢の負荷耐性を高める
足部、ふくらはぎ、股関節などへ段階的な筋力・バランストレーニングを行います。
走行量から先に戻す
平地の短いランから始め、症状を確認しながら、まず時間・距離、その後に速度や坂道を戻します。
SELF CHECK
相談前に整理しておきたいこと
次の内容を確認しておくと、痛みと負荷の関係を整理しやすくなります。 痛みを確認するために無理に走る必要はありません。
✓ 痛みは広い範囲か、狭い一点か
✓ 歩行や階段でも痛むか
✓ いつから、どの練習を始めて痛くなったか
✓ 最近、距離・速度・坂道・路面を変えたか
✓ 運動中・運動後・翌朝のどこで最も痛むか
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REFERENCES
参考文献
- Hamstra-Wright KL, Huxel Bliven KC, Bay C. Risk factors for medial tibial stress syndrome in physically active individuals such as runners and military personnel: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2015;49(6):362-369. PubMed
- Becker J, et al. Factors contributing to medial tibial stress syndrome in runners: a prospective study. Med Sci Sports Exerc. 2018. PubMed
- Winters M. The diagnosis and management of medial tibial stress syndrome: an evidence update. Unfallchirurg. 2020. PubMed
- Winters M, et al. Treatment of medial tibial stress syndrome: a systematic review. Sports Med. 2013;43(12):1315-1333. PubMed
- Anderson LM, et al. Is the addition of running retraining to best standard care beneficial in the management of runners with medial tibial stress syndrome? Study protocol for a randomised controlled trial. 2024. PubMed
- Milgrom C, et al. Medial tibial stress fracture diagnosis and treatment guidelines and differentiation from shin splints. J Sci Med Sport. 2021. PubMed
※本ページは一般的な情報提供を目的とし、診断を行うものではありません。
※研究内容は公開時点の情報です。新しい研究やガイドラインに応じて更新します。
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